世界のうちなーんちゅ物語 | 第3回
北米ユタ州在住・ユタ州沖縄県人会 会長 みよこさん
「世界のうちなーんちゅ物語」は、世界のどこかで暮らしながら、それぞれの場所で自分らしく人生を歩むうちなーんちゅたちの声を届ける連載です。
海外で暮らす人、沖縄に根を張って生きる人、文化や伝統を受け継ぐ人、新しい挑戦を続ける人。
それぞれの場所で紡がれる物語には、その人だけの歩みがあります。
一人ひとりの物語の中にある喜びや揺れ、そして沖縄とのつながりを通して、私たちが本来持っている温かさや可能性を見つめ直すきっかけになればと思います。
第3回は、アメリカ・ユタ州で暮らし、ユタ州沖縄県人会の会長として活動する、みよこさんの物語です。
ひと口メモ | うちなーんちゅ
沖縄の人、または沖縄にルーツを持つ人を指す言葉です。
興味を持ったことに挑戦しては、また次のことへ向かう。かつては、そんな自分を「何ひとつ極められない」と感じていたみよこさん。
けれど今は、三日坊主であることを自分の長所だと受け止めています。
「興味があったら、すぐ何でも『やってみよう』と思うんです。極めたことはないけれど、いつでもスタート地点に立てるんだなって思えて。」
石垣島で育ったこと。アメリカで重ねた仕事の経験。そして長男さんの姿から学んだ、自分軸と、ありのままを認めること。
ユタで沖縄とのつながりを育みながら、みよこさんは今日も、自分らしい一歩を軽やかに踏み出しています。
石垣島で見つけた、自分らしさ
みよこさんは東京で生まれました。父は東京出身、母は石垣島出身です。小学校二年生まで東京で暮らし、小学三年生からは母の故郷である石垣島へ。

東京にいた頃は、あまり活発な子どもではなかったといいます。けれど石垣島で暮らし始めてからは、学校の雰囲気や豊かな自然が合っていたのか、少しずつ好奇心のままに行動するようになっていきました。
「石垣島に住んでから、いろんなことに積極的に行動するようになったんです。環境って、すごく大切なんだなって思います。」
今も、太陽の下や自然の中にいる時間が好きだというみよこさん。沖縄へ帰れば海で遊び、海を眺めながら走ります。
「私が一番ワクワクするのは、太陽の下、自然の中で何かをすることなんだって分かったんです。自然の中に行くと、ワクワクするし、本当の自分に戻れる気がするんです。」
石垣島で過ごした時間は、みよこさんの中にある行動力や、何でも楽しもうとする気持ちの土台になっています。
みよこさんにとって、島全体がかけがえのないパワースポット。帰省するたび、海も空も風も、人も食も、そのすべてが力を与え、本来の自分を思い出させてくれる大切な存在だそうです。




みよこさんは、うちなーんちゅであることにも、強い誇りを持っています。家族や祖先とのつながり、独特の文化。そのすべてを大切に感じているそうです。
「どこ出身って聞かれると、日本ではなく『沖縄出身』って答えるんです。うちなーんちゅであることに誇りを持っています。」
遠回りに見えた時間が、経験値になった
アメリカへ移住した当初、みよこさんには大きなコンプレックスがありました。日本にいた頃のように、看護の仕事を続けられなかったことです。
英語も思うように話せず、簡単な英語でできる仕事しか選べない自分が嫌だったとか。
看護や医療の仕事をしてきた昔と比べ、目の前の仕事を「こんな仕事、つまらないな」と感じた時期もあったと振り返ります。
それでも、さまざまな仕事を経験する中で、少しずつ英語を覚えていきました。
日本で身につけてきた謙虚さに加え、自分の意見を率直に伝えることの大切さも学んでいきます。
「看護や医療の世界だけで働いていたら、出会えなかった学びがたくさんあります。当時は気づけなかったことも、振り返れば、どの仕事からも多くのことを受け取っていたんです。」
遠回りに見えた時間は、みよこさんの中に確かな経験として積み重なっていきます。
「いろんなことをしてきたなと思って……。今は、全部が自分の経験値になっていると感じます。」
ありのままを認め、信じること
みよこさんの考え方が大きく変わるきっかけになったのは、長男さんの病気でした。
思春期という、周囲の目が気になりやすい時期に、汎発性脱毛症という、外見が変わる病気を発症した長男さん。
「学校で、何か言われていないだろうか」「いじめられていないだろうか」と、心配したそうです。
けれど長男さんは、自分の軸をしっかり持っていました。
「誰かに何か言われてない?って聞いたら、『何か言ってきても、それがどうした?』って言うんです。我が子ながら、なんて強い子なんだろうって思いました。」
また、フットボールのコーチとの出会いも大きなものでした。ぶっきらぼうなところのある長男さんを、コーチは変えようとしませんでした。そのままを受け入れ、認め、信じて接してくれたそうです。

自分を偽らずにいられる環境の中で、長男さんはフットボールが上達し、自ら宿題に取り組むようになり、学校の成績も伸びていきました。最後の試合では、仲間たちが長男さんをキャプテンに選んでくれたとか。
その姿を通して、みよこさんは「自分軸の強さ」と、「ありのままを認めて信じること」の大切さを学びます。
子どもたちとの関わり方も変わっていきます。以前より口を出すことが少なくなり、子どもたちが自分で経験し、学んでいくことを見守れるようになったのです。
一緒にスポーツジムへ行くなど、親子の関係も少しずつ変化していったとか。
「人生は一度しかないから、いろんなことをやってみたらいいんじゃないって思うんです。失敗の中から学ぶこともあるだろうなって。」
ひと口メモ | 汎発性脱毛症
頭髪だけでなく、眉毛・まつ毛などを含む全身の体毛に脱毛が広がることがある、円形脱毛症の一つ。症状や経過には個人差があり、治療やケアは医療機関で相談しながら進められます。
三日坊主は、新しい場所へ向かう力
みよこさんは昔から、熱しやすく冷めやすい性格をコンプレックスに感じていました。
「周りには、音楽や料理など、ひとつのことを深く極めている人がいます。自分には、そんなものがないように思えたんです。」
けれど、あるときふと気づいたことがありました。
「三日坊主って、すごいことかもしれないと思ったんです。これがダメだったら、また次のことへ。いつでもスタート地点に立てる自分って、すごいんだなって。」
興味を持ったら挑戦し、違うと感じたらまた新しいことに挑戦する。そのたびに自分で新しい環境へ入り、その場所に適応していく。
極めてはいなくても、挑戦したことはすべて自分の経験値になっていると感じたそうです。
「三日坊主は、短所じゃなくて長所だったんだなって思えるようになったんです」
今のみよこさんは、朝の活動で友人と体を動かし、一人の時間には料理や読書、ガーデニングを楽しんでいます。
「人と過ごす時間も、自分の時間も、どちらも大切なんです」
朝、「今日はきついな」と思う日も、まずは友人との集合場所へ行く。太陽の光を浴びて体を動かすうちに、気持ちが整っていくそうです。

「一人の時間も、すごくワクワクするんです。料理してみたり、ガーデニングしてみたり。これも全部三日坊主なんですけどね。」
そう言って笑うみよこさんの言葉には、自分の変化を楽しむ軽やかさがあります。
ひと口メモ | 三日坊主(みっかぼうず)
始めたことが長続きしないこと。「三日」は実際の日数ではなく、「短期間でやめてしまう」という意味を表すたとえです。
故郷への恩返しを、少しずつ
みよこさんは現在、ユタ州沖縄県人会の会長として活動しています。
三線の心地よい音色に合わせて踊り、元気な指笛とともに太鼓を打つ。そのひとときは、みよこさんにとって故郷とのつながりを感じる大切な時間です。
「沖縄の血が騒ぐんです」と笑顔で話してくれました。

沖縄から来た人や、沖縄にルーツを持つ家族、その子どもたちが、沖縄を感じられる場所をつくりたい。県人会を築いてきた先輩方とも力を合わせ、楽しい時間を重ねていきたいと話します。
「アメリカにいても、沖縄から来た人たちのために何かできたらいいなと思っています。沖縄の素敵な文化も、微力ながら広めていけたらいいですね。」


故郷・石垣島への思いも、年々深まっています。アメリカへ移住してから、島のために力を尽くす同級生たちの姿を見るたびに、いつか自分も故郷の力になりたいと考えてきました。
「自分を育ててくれた島へ、少しずつ恩返しをしていきたい」
その第一歩として、みよこさんは帰省中にボランティア活動へ参加しました。


島で育ち、そこで出会った人たち、文化、そして経験してきたすべてのこと。その一つひとつが、失敗してもまた、楽しみながら挑戦できる今のみよこさんを育ててくれました。
「どんな経験も、決して無駄にはならないと思うんです。失敗も遠回りも、全部が今の自分をつくってくれた経験値。だから、今いる場所で自分らしく楽しんで、いろんな経験を積み重ねていこうと思います。」
