タンブルウィードが、ころころと目の前を横切っていきます。
乾いた大地を走り抜け、たどり着いたのはユタ州のキャピトルリーフ国立公園。
グランドサークルの中では、アーチーズやザイオン、ブライスキャニオンに比べると、少し控えめに紹介されることも多いです。
けれど、車を走らせているだけで、その印象は静かに変わっていきます。
赤い岩山、澄んだ空気、どこまでも広がる大地。
実際にトレイルを歩くと、この公園の魅力が体の奥まで入ってくるようでした。
旅のひと口メモ
日本では「グランドサークル」として知られるこのエリア。英語圏では、アメリカ南西部を意味する Southwest や、ユタ南部の国立公園を指す Southern Utah National Parks と表現されることもあります。
キャシディアーチ・トレイルを歩く

今回、私たち夫婦が選んだのは、キャシディアーチ・トレイルです。
トレイルの入り口で看板を確認し、赤い岩山の中へ歩き始めます。
私たちの少し前には、高校生くらいの女の子たちが歩いていました。音楽が好きな、アート系のグループなのかな。そんなふうに、勝手に想像してしまいます。
ちょうどよい岩場を見つけると、彼女たちは立ち止まって岩に登り、ハーモニカを吹いて楽しんでいました。
その姿を見て、以前モアブでハイキングをしたときのことを思い出します。360度を高い岩山に囲まれた場所で、犬を連れた女性が池のそばに立ち、歌を歌っていました。
その声はキャニオンに響き、ずっと遠くまで届いていきます。
大自然の中で、ありのままの自分でいる人たち。
周りの目を気にせず、自由に自然を楽しんでいる人を見ると、自分がどれだけ人目を気にして、肩をすぼめて生きてきたのかに気付かされます。

旅のひと口メモ
キャシディアーチの名前は、映画『明日に向って撃て!』でも知られるアウトロー、ブッチ・キャシディに由来するとされています。このあたりの峡谷には、彼が身を隠していたと伝わる場所もあります。
高さを感じながら進む赤い岩の道
歩き始めたときは、高所を歩くトレイルだとはあまり思っていませんでした。けれど途中から、思った以上に高さを感じる場所が出てきます。

高い場所が得意ではない夫の方が、途中で少し緊張していました。おっちょこちょいの私が、あちこち動き回るので、見ている方が落ち着かなかったのだと思います。






あそこまで歩くのだと思うと、少し気持ちが引き締まります。


頂上に着くと、すでにたくさんの人がいました。スナックを食べる人、ぼんやり景色を眺める人、ロッククライミングをする人。崖の近くから、その様子を見ている人もいます。



私はというと、景色を見ながら人間観察をしていました。
英語でいう、ピープルウオッチングです。
上半身裸で歩く人がいる一方で、私のように寒くてスカーフを巻いている人もいます。小さな赤ちゃんを背中におんぶして歩く人もいました。かなりの体力です。
いろいろな人がいて、それが当たり前。
だからこそ、旅も人生もおもしろいのだと思います。



高い場所が苦手な人には、少し向かないトレイルかもしれません。けれど、頂上まで登る途中に見える景色と、登り切ったときの開放感は、やはり特別です。
キャピトルリーフ国立公園の静けさと、赤い大地の力強さ。
その両方を、体で感じられるトレイルでした。
写真を撮るときに気を付けたいこと
一つだけ、気を付けたいことがあります。
写真を撮るときは、必ず足を止めてから撮ることです。
スマートフォンの画面に映る景色に気を取られ、ハイカーが転落する事故は毎年起きています。自分は大丈夫と思わず、安全をいちばんに考えたい場所です。


ちなみに私は、トレイルを歩いている最中、スマートフォンをリュックの中に入れています。写真を撮りたいときだけ立ち止まり、リュックから出して撮影します。
そのとき夫は、必ず後ろから私の服をつかんでいます。
私がうっかり動かないように、見守ってくれているのだと思います。
赤い大地が教えてくれること
キャシディアーチの上から見る景色は、思っていた以上に広がりがあります。赤い岩肌が重なり、遠くの大地まで静かにつながっていきます。
派手に語らなくても、そこに立つだけで伝わってくるもの。
赤い岩山、澄んだ空気、遠くまで続く大地。

人と違っていてもいい。
ありのままの自分でいい。
そんなことを、キャシディアーチ・トレイルは静かに思い出させてくれました。
次回は、キャピトルリーフ国立公園で楽しんだ、もう一つのおすすめトレイルをご紹介します。
グランドサークルの旅で訪れた場所を、少しずつ記録しています。
赤い大地をめぐる旅の続きも、よろしければご覧ください。
