渡米21年。憧れの仕事を手に入れたけれど

テレワークが教えてくれた心の声

米空軍に勤める夫の転勤で、沖縄からユタ州へ渡米して21年。
アメリカ政府の仕事に就いて、16年がたちます。

アメリカに来たころ、わたしには憧れていた姿がありました。

左脇には英字新聞。
右手にはスタバのコーヒー。
おしゃれなスーツを着て、毎朝、車に乗り込む。

そんな「かっこいい自分像」です。

けれど、最初に受けた面接は不採用。
理由は、英語力でした。

正確な言葉は覚えていません。
ただ、オフィスの顔となる受付係には、当時のわたしの英語力では難しい。
そんな内容を伝えられたことを覚えています。

その後、日本食レストランでウェートレスとして働き始めます。
目的は、英語力を磨くこと。

団体のお客さまから、100ドルのチップをいただいたこともあります。
けれど、その仕事も長くは続きませんでした。

今なら、外の現実は自分の内側を映しているのだと感じます。
あのころのわたしには、自分の心を見つめる余裕が、まだありませんでした。

その後も、いろいろな仕事を経験します。

外は氷点下。
分厚い手袋をして、朝3時から空軍基地内のコミサリーで冷凍食品の棚入れをしたこともあります。

自宅で託児所を開いたこと。
空軍基地内の保育園で、保育士として働いたこと。

その時々で、できることを探しながら進んできました。

その後は部署を変えながら、アメリカ政府関連の仕事を続けます。
面接を受け、採用され、また次の場所へ進む。

そして2021年1月。
ようやく、現在のオフィス職にたどり着きました。

ビジネスカジュアルのドレスコードがある仕事。
それは、21年前にアメリカへ来たころから憧れていた職種に近いものでした。

英字新聞を脇に抱え、スタバのコーヒーを飲みながら、おしゃれな服で出勤する。
あのころ思い描いていた姿に、少し近い仕事です。

ところが、コロナ禍の影響で、ほぼ2年間、100%テレワークになりました。

もちろん、テレワークにはよいところがたくさんあります。

通勤ラッシュのストレスがないこと。
隙間時間に、食洗機の食器を片付けられること。
洗濯機を回したり、乾燥機へ衣類を移したりできること。
サインが必要な郵便物を受け取りやすいこと。
ガソリン代の節約になること。
いつでもトイレに行けること。
家族同様の愛猫と一緒にいられること。
外の空気を吸いたいときは、ノートパソコンを持って裏庭で仕事ができること。
オフィス内の人間関係から、少し距離を置けること。

こうして見ると、とても恵まれた働き方です。

それでも、ある日ふと思いました。

このまま毎日、コンピューターの画面と向き合いながら、定年まで過ごしたいのだろうか。

もし毎日オフィスへ出勤し、人と直接かかわりながら仕事をしていたら、その小さな声には気付かなかったかもしれません。

人と接する機会が、一気に減った2年間。
毎日、コンピューターの前に座り、ヘッドセットを着けて、仕事を学ぶ日々。

便利で、静かで、ありがたい。
けれど、どこか心が置き去りになっているような感覚もありました。

「わたしがしている仕事は、本当にこれでいいのだろうか」

そんな問いが、少しずつ心の中に浮かぶようになります。

そのころ、右耳の後ろから首筋にかけて、吹き出物が出たこともありました。
自分でも驚くほどでした。

久しぶりに会った家族や友人からも、会った瞬間に「どうしたの?」と聞かれるほど。
病院が苦手なわたしも、さすがに診てもらったほうがいいと思いました。

医師に相談すると、処方されたのはニキビの薬。
49歳でニキビの薬。

少し笑ってしまいました。

その年の11月からは、少しずつ出勤も始まります。
人と直接会う機会が増えると、「ちゃんと仕事ができていたんだ」と思えるようになりました。

その実感が持てたことで、心がふっと楽になります。

心と体のバランスを保つうえで、人と直接かかわることは、やはり大切なのだと感じました。

21年前に憧れていた仕事。
今のわたしは、その場所に立っています。

出勤する日の姿は、昔思い描いていたイメージに近いものです。

けれど、実際にたどり着いてみると、心の中に小さな違和感がありました。

「あれ、少し違うかもしれない」

その違和感は、わがままではなく、心の声だったのだと思います。

アメリカで働き続ける中で、悔しい思いをしたこともあります。
体調を崩した時期もあります。
それでも、その一つ一つが、わたしに立ち止まるきっかけをくれました。

頑張ることで進んできた道。
けれど、これからは、頑張るだけではない働き方を選んでもいい。

そんなことを、テレワークの時間が静かに教えてくれた気がします。

周りから見れば、恵まれた仕事かもしれません。
簡単に手放すものではないと思われるかもしれません。

それでも、自分の中に生まれた小さな違和感は、なかったことにはできません。

テレワークをしたから気付いたのか。
50歳を前にして、この先の生き方を考え始めたのか。

理由は、ひとつではないのだと思います。

ただ、わたしを取り巻く環境や、人とのかかわり方が、大きく変わったことは確かです。
そして、生き方そのものも、少しずつ変わり始めていました。

2022年は、挑戦と選択、そして手放しの年。
今年も残すところ、あと5日です。

自分軸に立ち、今この瞬間を味わいながら行動していく。
そうすることで、これからの仕事のあり方も、自然と見えてくる気がします。

2023年、どんなわたしに出会えるのか。

少しだけ、楽しみです。

イルミネーションが輝く年末のダウンタウン・ソルトレイク

2022年12月に旧ブログで書いた記事を、今のわたしの視点から少し整えています。

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